1995年秋ラスベガス、COMDEX (Computer Dealer's Exhibition)のキーノートスピーチでビルゲイツが「ホームページを持っているホームレス」みたいな冗談を交ぜながらマイクロソフトのインターネットシフト宣言とWindows95 / Internet Explorerの発売。この頃から画像・映像についてもデジタル化、ネットワーク指向が加速し始めた。 その頃私は JEIDA (日本電子工業振興協会、現JEITA) のデジタルカメラ技術委員会にも顔を出していた。この委員会には後にQV-10 (コンシューマー向けデジタルカメラ第1号) 開発のトピックでNHKのプロジェクトXに取り上げられたカシオの末高さんも属していた。全体に意気込み高く和気あいあいとした委員会だったが、デジタルカメラに対する各社それぞれの背景や思惑なども見え隠れして興味深かった。
フィルムカメラは文字通り暗箱(カメラオブスキュラ)である。悪く言えば空虚な箱にレンズとシャッターをつけるだけで商売できる美味しいビジネスである。 一方デジタルカメラとなるとフィルムカメラに加えて、より一層部品コスト開発コストがかかる、イメージセンサー、画像処理回路、ディスプレイ、電池等、部品採用数が桁違いに増える。従ってコスト構成から見れば全くの別物である。 フィルムカメラで十分ビジネスが出来ていたキヤノンとしては、ビジネス的には出来るだけ長く銀塩写真時代が続くことを望んでいたが、ITインフラの急速な発展を見て、この年デジタルシフトへハンドルを切ることになった。
そして、このデジタルシフトにより、キヤノンはインクジェットプリンターとの連携を強化。画像のアウトプットとして家庭でのフォトプリント市場の開拓にも注力、フォトビジネスの領域を広げることになる。
国内カメラメーカーのデジタルカメラは、2000年には出荷金額で、2002年には出荷台数で フィルムカメラを上回った。 2003年、キヤノンはコンパクトデ ジタルカメラから35mmフルサイズセンサーのデジタル一眼レフEOS-1Dsまでのラインアッ プに、普及型一眼レフEOS kissデジタルを加えデジタルカメラ業界No1のメーカーとなった。
デジタルカメラの主要部品であるディスプレイや電池等は、カメラに比べて生産台数が圧倒的に多い携帯電話と共通の技術・部品が多い。 したがって、携帯電話の発展普及がなければこれほど急速にカメラ/写真のデジタル化は進まなかったと思う。2007年 Apple iPhone 以降のスマートフォンのAV関連機器への浸食は革命的であり、今後、カメラが現在の形態を保っていられるのかは予断を許さない。
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