吉谷真子 2012年入学
【半年間のインドネシア留学に行ってきました】
インドネシア大学の経済学部で 8月後半から留学をしていました。インドネシアの社会保障と教育環境の状況を知り、その改善について経済学の視点から政策を考えることと、インドネシアの生活を知る目的でした。
① インドネシアにはどんな社会問題があるか、なぜ問題なのか(課題発見)
② 経済理論を応用してどんな政策を立てるか(政策立案)
③ 政策の実行とそのチェック、修正
・・・このサイクルを見て、インドネシア人学生・教授・タクシー運転手・ツアーガイド・中学校の先生など様々な人から政策に対する思いを聞くことができたのは大きな収穫でした。また、経済格差(地域、階層)、ゴミ処理、道路整備、地方医療など様々ある課題の中で、自分にはどんなことができるか、社会の中での自分の役割について考えさせられました。
■授業
インドネシア経済、開発経済学、公共経済学、労働経済学の4つを履修しました。学んでいくうちに、各科目のつながりが見えてくるようになりました。例えば、開発経済学で学んだ産業構造の転換がインドネシア経済にも当てはまるかを考えるなど、理論を応用して現実の経済を分析し、発展のためにどのような政策が有効かを公共経済学で学ぶ、という感じです。また人材育成は国の発展に欠かせませんが、その教育コストをだれが負担すべきかという点では労働経済学に、国や地方公共団体が負担すべき場合はどのように資金をねん出するかという点で公共経済学に繋がります。学びが自分の生活やすでに知っていることに繋がるととても面白いということを改めて感じました。
■ボランティア
最後の2週間は、中部ジャワスマランでワークキャンプをしました。風俗街で経済水準が低めの地域に暮らす、3歳から8歳位までの子どもに、マナー(挨拶・暴力をしない・人の話を聞く)を理解してもらうこと・地元の小・中・大生との異文化交流が内容でした。子供たちは私たちと遊ぶことを楽しんでおり、マナー教育も浸透しボール遊びのルールに従って遊ぶようになりましたが、生活水準やそれに伴う教育水準の低さなど根本的な問題にアプローチすることはとてもできず、はじめから分かっていたものの、悩みました。ボランティア仲間と短期で出来ることは何か、公のすべき領域とボランティアがすべき領域とは、外国人がいきなりやってきて自分の子どもと遊んでいたら不信感を抱くのではないか、など色々と話しました。子どもに注意する時の伝え方(理由がわかるようにする)などを改善していきました。それでも私たちが帰ったら子どもたちはルールに従うというルールや、友達を蹴らないなどということは忘れてしまうのではないかという懸念もあります。そうするとやはり地域の中で躾を誰がどのように行うかというところを詰めないといけないと感じます。
■留学を通して考えたこと・気付いたこと
留学前から卒業後の進路を悩んでいたのですが、留学をして自分が何をしたいのかをゆっくり考えることができました。Jam Karet (ゴムのような時間)のおかげかもしれません。
留学前、「社会には貧困、戦争、経済格差などたくさんの問題があるが、その中で自分の専門を絞らなければならない」と考えていたにもかかわらず、留学生活を通して私の関心はどんどん広がっていきました。友達に相談したところ、「関心が広がるのはいいけれど、自分が専門として一番したいことがないのは大学生としてはどうなの」と言われ、自分の軸や信念などを考えてみました。すると私が教育・社会保障に興味があるのは、自分ではどうしようもできない問題を抱えている人の支えになりたいと考えていることが基になっていることに気付きました。そして私が困っている人を助けたいと思う理由は、構造的な問題のために苦しむ人がいるということを放っておくのはおかしいと感じることと、人々の不満がたまって犯罪や紛争につながることを危惧しているからだと分かりました。社会的弱者のためのセーフティネットとしての社会保障、そして不安定な社会の中で生きるための「知識+学ぶ力」が身に付くような教育。教育も個々の人間の技能や社会の中で生きる力を身に付けてくれるセーフティネットと考えると大きい意味で社会保障なのだ。。。これが今まで私がうまく表現できていなかった「社会保障と教育」という言葉の中身だと気付き、嬉しかったです。そして今までは「~だと思う。」という感想を持つばかりで、理論に結びつけてどう対処するか探ることまではしていなかったのですが、思ったことをまとめるだけではなく、関連しそうな論文や書籍をさがして読むようになりました。学び→感想で終わるのではなく、思ったことを発展させて裏付けをとるようになり、学びと気づきが自分の知識と思考が双方向に補完しあう感じで、初めて学生になった気がしました(情けないですね)。現在は「社会問題がたくさんあるならそれぞれの問題に取り組む人が育てばよいのではないか」、「社会問題つまり需要のあるところに労働力が流れるような仕組みはできないか(需要のある介護関係の給料を上げないのはなぜか)」ということで、社会教育と経済政策の勉強に力を入れています。(一般的な留学報告ではなく自分の進路や考えにかなりフォーカスした内容になってしまい申し訳ございません。)
現役生の皆さん、もし留学について聞きたいことがあったら聞いてください。私も話したいです(笑)そして今から留学を考えている人がいたら、官民協働パートナーシップの「トビタテ!留学JAPAN」に応募することをお勧めします。これは留学生を経済的な面だけでなく、留学計画のブラッシュアップ(社会人からのアドバイス)、滞在中のケアなどやる気と留学内容に魅力を感じてもらえれば全面的にサポートしてもらえます。そして刺激をくれる素敵な留学生仲間もできます。
今まで寄稿文を読んでいただきありがとうございました。英友会の方から励ましの言葉をもらうことがあり、勢が出ました。岩瀬様、毎回文章を校閲していただきありがとうございました。堀江様、寄稿文のお話をいただきありがとうございました。高橋様、インドネシア留学の背中を押していただき、ありがとうございました。桂井様、インドネシアの豊富な情報、進路相談、渡航に関わる様々なバックアップをしていただきありがとうございました。皆さまのおかげで、思う存分に充実した留学をすることができたと思います。
プロフィール
氏名:吉谷真子(よしたに まこ)
入学年・学部:2012年入学 法経学部
2014年度ESS部長
名前はペンネームでも構いません。
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