誰もが通る、「相続」問題

桂井洋介 1982年入学

 

私は不動産関係の会社を経営しており、特に相続関係の諸問題にライフワークとして取り組んでいます。

今回は、昨今の相続に関する話題について、ご紹介したいと思います。

 

問題の一つとしては、雑誌等でよく取り上げられる、「相続税の増税」という切り口がまず挙げられます。2015(平成27)年11日以降に亡くなった方(被相続人と言います)から残された方(相続人と言います)に財産が移転した際の相続税の負担は大きく増えることになっています。

国の政策の中で、税収を上げる必要があること、またここ数十年の間に、相続税の課税基準がかなり緩くなっていたのを、ある程度前の水準まで戻す、という意向から、増税となりました。

 雑誌には、増税になるので、庶民も税金対策をしよう、という書き方が多いのですが、自分は少し違う視点から記事を見ています。

 

財産の「分割」について

相続に関する問題の一番は、財産の「分割」です。

この記事をお読みになる方は、是非ご自身の家族のことだと思って、一度考えて頂くとよいと思います。まだ祖父母、両親が健在であれば、その方たちが順番に天国に行かれたとして考えてみましょう。残された方が、亡くなった方の財産を分割することになります。

その際に、どのような財産があって、誰がそれをもらうのか、という問題に直面します。

 

よく取り上げられる問題としては、財産の中で、自宅の土地・建物が多くをしめ、その財産をもらう人と、もらわない人との差が大きく、分割でもめる、というケースです。

亡くなった方の晩年の世話をした方としなかった方、さらに、その自宅部分に同居していた方と、そうでなかった方がいて複雑になる、ということも多く見られます。

 

兄弟姉妹の間でも、それぞれの事情があり、相続が発生するまでの間に、各自が過ごしてきた人生の中で、皆が均等に財産を受け継ぐわけではなく、お互いがその事情について納得がいかない場合、財産分割の際に、色々な感情が出てきます。

大学に行く学資を出していた、結婚の際にお金を持たした、家を建てる際に資金援助をした、などが挙げられています。

 

相続が起こった際には、他の相続人と遺産の分割を話し合うのですが、円満に分割ができるように、お互いに譲り合う、という気持ちを持つことが必要だと考えます。

相田みつおさんの詩に、「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」とあります。相続が発生した際には、この言葉を念頭において欲しいと思います。

 

「納税」資金の確保

分割の次に直面する問題は、「納税」資金の確保です。

申告・納税は、亡くなった日から10ケ月目、と決まっており、時間の余裕が無いことがほとんどです。 一般的には、四十九日の法要が終わり、納骨を済ませた辺りから相続の話合いを始めるようですが、財産の多くが不動産である場合で、なおかつ税金の支払いが必要な場合、資金の確保が難しいことも多くあります。

自宅部分の評価が高く、それを売却するわけにはいかない、なおかつ、他の相続人にも財産を分けてあげる必要がある、という場合、代わりの財産を用意しなくてはなりません。

事前の対策が可能ならば、出来るだけ現金化しやすい財産の割合を増やしておく、というのが重要です。

 

そして節税

前述の「分割」「納税」をクリアできるめどがついて、初めて「節税」を考える、というのが順序です。

雑誌を読むたびに違和感を覚えるのが、前段階のことを飛ばして、増税になるのが大変だから節税、という書き方が主流だからです。

税金を払うのがいやだから、何がなんでも節税、という風潮にはおおいに疑問があります。世間では「○○をして節税」という広告も多く見られますが、その大半は、本末転倒であり、真に受けてその対策をした方たちは、結果として財産を大きく目減りさせることにもなります。典型的な例としては、「土地のままだと税金が高いので、アパートを建てましょう」というのがありますが、アパート経営は難易度の高い事業なので、慎重な判断が必要です。

 

事前のシミュレーションが重要

上記のような考え方がご理解頂けたら、お勧めしたいのは、現状の把握です。

全ての財産を把握するのは困難だとは思いますが、ご家族にどのような財産があるのか、をリストアップすることはどこかの段階で必ず直面しますので、時間をみつけて開始するのが重要です。また、日ごろから、兄弟姉妹等、相続人の間で、話合いが出来る状況を作っておくのも必要です。 再三になりますが、分割がうまくいかなければその後の作業は困難になるからです。

 

相続問題については、さまざまな問題を含んでおります。皆様も何か問題に直面するようでしたら、どうぞお気軽にご相談下さい。 

メール Yosuke-k@yf6.so-net.ne.jp

携帯電話 080-6529-4852です。 

 

プロフィール

氏名:桂井洋介(かつらい ようすけ)

入学年・学部:1982年 園芸学部 園芸経済学科入学

入学と同時にESSの門をたたき、園芸学部の松戸には殆ど行かず、大学の4年間、ESSの活動を中心に過ごす。

同級生の妻と知り合ったのもESSのおかげ。入学時には、ほとんど英語は出来ませんでしたが、卒業時には、それなりにブロークンイングリッシュを喋れるようになりました。40代半ばに、再度英語の勉強に取り組み、TOEIC905点取りました。

現在は桂井商事株式会社の代表取締役として、不動産投資、仲介、コンサルタント等の業務を行っています。英友会の会計と、現役生との窓口役をやっています。

名前はペンネームでも構いません。

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コメント: 2
  • #1

    田中 良江(1982年入学) (火曜日, 24 3月 2015 23:03)

    上記の論説は、財産の分割と言う論点で述べられていますが、例えば遺言等により、分割しない場合については、どうお考えですか。代表相続人が財産を大部分受け取ると言うことです。かなりの財産がある場合、財産を保持する場合、家の存続等についてです。生命保険で補うと言うことについても一般論をお聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。

  • #2

    桂井洋介 (水曜日, 25 3月 2015 00:28)

    田中さん こんばんは。お久しぶりですが、お元気ですか。 コメント頂きありがとうございます。 ご質問の件ですが、以下自分の意見を述べさせて頂きます。

     遺言等により、分割しない場合、ということは、遺言等により、誰か特定の方が財産の大半を相続する、という意味ですね。その場合、相続する方は良いとしても、財産をもらわないことになった相続人の方が、その遺言等の内容に不満があった場合、遺留分の減殺請求、ということを主張する可能性があります。

     遺留分というのは、法定相続分の半分あり、配偶者、子供、孫などにあります。(兄弟姉妹には、遺留分はありません) 

    遺言等を用意されていても、上記のように、トラブルが起こる可能性はありますので、前回記載したように、相続人間でのお話し合いが大事になります。
     特に、もらう財産が少なくなる方への対応が必要です。戦前のように、家督相続、という考え方がなくなり、兄弟姉妹は皆平等、ということになっていますので、一部の方がたくさんもらう、ということには、反対する人も多いので、悩ましいところです。

    生命保険で補うことについては、生命保険は、そもそもは、個別の契約なので、相続財産とはちょっと違うのですが、お金がかかわることなので、相続税の対象になります。なお、相続人一人あたり、生命保険金500万円までが無税、ということになっています。

    生命保険をある程度の金額でかけておけば、被相続人が亡くなった際に、現金が用意でき、相続財産の分割の際には、有効な場合も多くあります。

     実際には、被相続人がある程度の年齢になると、生命保険に加入できなくなりますし、加入できたとしても、毎年支払う、保険料が結構大きな金額になり、現金がどんどん少なくなることから、大きな金額の保険に入るのは難しいことも多いです。

    保険に入れる、ということは若くて健康ということなので、そういう方が、すぐに亡くなるというのも考えにくいですし。
    総論としては保険の活用には大賛成なのですが、各論については、難易度が高い、というのが実情です。

    取り急ぎ、以上回答いたします。 また、何かご質問があれば、どうぞお気軽にお願いします。 桂井洋介

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