ワインの楽しみ方‐甲州

植原宣紘 1959年入学

 

 「ええっ、本当にこれが甲州のワイン?」 ドイツから来日したショーンレーバー氏の「ラインガウ甲州2005」(白ワイン)を試飲して私は驚愕しました。ほのかな香りあり、完熟からくる濃厚なコク、ボディがあり、それでいてクリーン、酸の切れ味もいい。この時、日本原産の甲州は栽培方法を工夫すれば、国際水準のワインになる可能性あり、と私は確信したものです。2002年に私がドイツに送った甲州が、まだ若木の段階にもかかわらず、極上の甲州ワインになって里帰りしたのでした。

甲州種は中国から種(たね)でもたらされたと推定されています。勝沼で約千年も、栽培され続けています。はるばるシルクロードを通って小アジアから中国にもたらされ、日本にたどり着いた甲州は、千年の眠りの末、国産白ワインの大黒柱になりつつあるのです。

最近では、世界の和食ブームに乗って、日本のワインの輸出も始まり、ロンドンやパリなどの和食店に並ぶようになりました。ワインの品質は著しく向上してきています。実は、この品質向上は1990年代からめざましくなり、中央葡萄酒の「樽甲州1997」や、メルシャンの「城の平カベルネソーヴィニヨン1994」(赤ワイン)などが国際コンクールで金賞を射止め始めていたのです。このように国産ワインは長い時間をかけて一歩一歩前進してきました。

今まで個性が薄いと言われた甲州に、芳香性前駆物質(メルカプトヘキサノール)を発見し、柑橘系の心地よい香りを引き出すことにも成功しました。甲州はボルドーのソーヴィニオン・ブラン(白)と同じ香りを持つ、一流品種と肩を並べる品種に昇格したのです。

11年前から山梨で国産ワインコンクールが始まり、これが全国各地に多大な刺激をもたらしました。ブドウ主産地の山梨、長野だけでなく、九州から北海道に至るブドウ生産地のワインがその品質を競い合っています。ワイン好きにとっては、まさに喜ぶべき時代を迎えているのです。

 

プロフィール

氏名:植原宣紘(うえはらのぶひろ)

入学年・学部:1959年 入学 園芸学部

卒業後()植原葡萄研究所を経営、現代表取締役,

ブドウ育種家,葡萄苗木の生産販売を行う。

現在日本果樹種苗業者協議会会長

フランスからシュバリエ・デュ・タートヴァ

(ワイン利き酒の騎手)の称号を授与されている。

 








筆者

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