私の プロジェクト X  観測船「ふじ」に触れる

斎藤 収 1958年入学

 

OTQ-1」それは昭和42年建造の南極観測船「ふじ」に搭載された全電子式艦内電話交換機の型式名だ。当時、小型交換機(内線電話機50機)でも全てトランジスタなど半導体回路網で作ることは1,2例がある位であった。まして艦船に搭載する例は本邦初であった。

 

「ふじ」は初代南極観測船「宗谷」の2代目として横浜の日本鋼管鶴見造船所で建造された。所属は海上自衛隊であり別名海上自衛艦砕氷艦「ふじ」である。当時、国家事業として富士通が開発を請負った装置である。

 

そして入社3年目の私と2年目のA君(慶応大工)、1年目のY君(早大理工)の3名が設計の初めから艦船据付試験調整そして引渡しまで拝命する、やり甲斐のある幸運にめぐり合わせた。

 

装置は当時の環境条件から艦船の振動、揺動、温度などが一番条件のよいジャイロ室(船の重量中心位置)があてがわれた。我々は鶴見造船所ドックで建造中の船に通い、そして進水した後、東京湾を試験航海しながら調整試験に臨んだ。企業社会において電子回路や装置を開発する経験以外に、艦船に搭載した船の世界に社会経験の一端に触れたことは若い我々の経験感覚を広げてくれた。

 

翌年「ふじ」は昭和基地に7次観測隊を運び前越冬観測隊と交代した。翌年帰還した自衛官から昭和基地オングル島採取の岩石を記念に我々に土産としていただいた。試験乗船中、昼食場所に士官用食堂や隊員食堂など経験したり、ブリッジ、エンジンルームなど隈なく見学したのも稀有な機会であった。

このプロジェクトは富士通時代の技術部諸先輩、筐体設計、電源設計、試験課諸氏総勢約20人の皆さんが協力して造りあげた。当時若造であった我々4人の仲間は毎年飲み会で当時を楽しんでいます。



プロフィール
氏名:斎藤 収
入学年・学部:1958年入学 工学部電気工学科

名前はペンネームでも構いません。

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